シリーズ 「更生保護」って何だろう?

「BBS」って何だろう? ともに考え、歩んでいく。「BBS」という関わり方。

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思いを伝え、つなげていく。

ふうか BBSのいい影響とはどんなものだと思いますか?
高坂さん 非行グループの中にいると、たとえば先輩やOBでも、鑑別所や少年院に入ったことがある人はいても、大学を卒業したような人とはあまり出会えないですよね。でも、大学生のBBS会員と接する機会が増えてくると、これまで自分のまわりにいなかった人たちのことが見えてくる。

BBS会員との交流を通じて「自分も高校を卒業できるんじゃないか」「ひょっとしたら大学に進めるかもしれない」という可能性に気が付くんです。留学経験のあるBBS会員の話を聞いて、これまで外国に勉強しに行くなんて考えたこともなかったけど、そんな考え方もあるんだな、ちょっと面白そうだなって考えたり。それまで非行グループという小さなコミュニティ内での会話や考え方にしかふれてこなかった子が、同世代のともだちが教えてくれるいろんな楽しいことを知って「それってなんだか面白そうですね」なんて自然な興味を抱くようになる。

BBS会員との交流を通じて「高校卒業をめざします」「大学進学をめざします」という風に目的意識が生まれるケースも少なくないので、それはBBSならではの影響力だと思いますね。

ふうか 同世代だからこそ、自然に伝わるものがあるような気がします。
高坂さん 先日も嬉しいことがあって。15歳からずっと関わってきた少年がいたんですが、定時制高校を卒業して、就職も決まって、ようやく20歳を迎えたのでお祝いをしたんですね。彼は保護観察が終わってからもBBSの集まりに顔を出してくれて、BBSとの交流は続いていました。お祝いの席でも「社会人になったし、自分にできることがあれば手伝いますよ!」って言ってくれて。

そういうのはやっぱりとても嬉しいんですね。少年院を出てすぐの不安定な時期に、BBS会員が僕と一緒に1年間ずっと寄り添ってくれたというのが、彼にも相当いい影響を与えたんじゃないかと思うんです。
ふうか どんな風に寄り添っていたのでしょうか?
高坂さん 彼は少年院を出てからは、昔の仲間とは距離を置こうとしてたんですね。BBSの集まりには当初から顔を出してくれていたんですが、その帰り道にふと「じつは前の仲間から家の方に電話が来たみたいで。ちょっと怖いんです」と話してくれて。普段は「何かあった?」と聞いてもなかなか言ってくれないんですけど、そのときはポロッと不安を漏らしたんですね。それを聞いて僕らも「そうなんだ。でも大丈夫だよ。また連絡が来るようなら言ってね」って励ましたんですが。幸いそれ以上の接触は無かったようなので良かったんですけど。

ゆうか そういった不安や怖さって、なかなか口にしずらいですよね。
高坂さん そういう不安な部分って、ふとした場面でいきなり、その子のタイミングで言ってくるというか。こちらから聞き出そうとしても「いや、大丈夫です」なんて強がったりしますしね。だけど、やっぱりみんな大丈夫ではなくて。友だちのこととか、学校のこととか、バイトのこととか、親のこととかで、何かしらけっこう悩んだりしてるんです。

でも彼らは人に助けを求めたり相談するのが苦手だったりするから、それで非行に至ってしまうようなところもあるんじゃないかと。自分がいま大変な状況なんだっていうのを口に出すのが苦手な子が多い印象もあるんですよね。
ふうか たしかに、こちらから聞き出すことは難しいですね。
高坂さん だからこそ、彼らと会う機会を、BBSのグループワークでもいいからできるだけ多く作るようにしていかないと。初めはチラッと顔を合わせるだけの関係でもいいので、定期的に会えるという環境を維持し続ければ、本人のタイミングでポロッと口に出してくれるかもしれない。たとえすぐには解決できないようなことでも、不安や悩みをだれにも言えずに一人で抱え込むのと、だれかに言えるのとでは、本人にとって大きな違いがあると思うんですよね。
ゆうか そうですね。ふとしたときにポロッと本音が漏れるというのは、ある程度は信頼というか関係性が築けていないと起きないことだと思うので、日頃からの下地を作っておくことは大事ですよね。

じつは、ちょっと悩んだ時期があったんです。BBS会員として少年と定期的に会ってはいたんですが、そのことが少年にとって迷惑なんじゃないかとか。向こうも本当は面倒くさいな…とか思ってるんじゃないかとか。そんな風に考えてしまったことがあるんですが、実際のところはどうなんでしょうか?

高坂さん うーん、それはケースバイケースなのでなんとも言えないですけど…。でも、たとえば僕がだれかと友だちになりたいと思っても、向こうはなりたくないってことは普通にあるわけですよね、BBSに限らず。そこはやはり人と人なので、まあ仕方がない。だけどBBSに関して言えば、たとえそのときは友だちになれなかったとしても、社会にそういう人がいるんだってことは彼らに伝わりますよね。それが大事だと思うんです。手を差し伸べてくれる人がいるってことを、少年たちに伝えることだけでもすごく意味がある。
ゆうか ありがとうございます。今の言葉で救われた気がします。
時にはそういった長いスパンで考えることも必要ですね。
ふうか 高坂さんから見て、これからのBBSに必要なのはどんなことだと思いますか?
高坂さん BBS会員と非行少年たちが、もっともっと友だちになってほしいと願っています。元の仲間たちだけとつるんでいると、本当はやりたくないんだけど強がって悪いことをくり返してしまったり、自分だけの力で生き方を変えていくのは難しいんですね。

だから、同世代で非行をしていない友だちの存在って、すごく大きいんですよ。BBSはまさにそういった役割を担っていけると思うので、どんどん活発に活動を広げていってほしいなと思います。

ふうか そのためには、私たちBBS側も保護観察所の保護観察官や地域の保護司の方々に自分たちの活動をお知らせしたりして、もっと積極的にアピールしていかなくてはいけないのかもしれませんね。
高坂さん 非行少年と同世代の人たちが「ともだち」になるというBBSの在り方は、すごく有効だと思うんですよ。でも、そのコンセプトがまだ世の中に広く知られていないですよね。そこがちょっともったいないなと。

あと、ひとつのアイデアとして、BBSの活動に「元・非行少年」が参加するような試みがあってもいいじゃないかと。保護観察が終わって、悪いグループとも縁が切れて、きちんとやり直していこうとしている人たち。BBSの人たちとも連携できるし、非行少年とも仲良くできる。そんな「元・非行少年」たちが参加できるようになれば、BBSの良さがさらに発揮できるんじゃないか、なんて考えたりしています。
ふうか それは面白いですね。たしかに、私たちも想像でしか分からない部分もありますし。どうしても頭でっかちになりがちなところもあると思うので。
高坂さん 先日もBBSの会員たちと話す機会があったんですけど、みなさんものすごく「心」があるんですよね、本当に。世の中にはさまざまなボランティア団体があるのに、その中でもあえてBBSを選んで参加してくれて。自分の大切な時間を割いて、相当なエネルギーを注いでくれているBBS会員が全国にたくさんいる。その思いが非行少年たちにちゃんと伝わっていけば、すごくいい形になると思うんです。
ゆうか 非行少年たちとの接点はもっと広げていきたいですね。
高坂さん BBSは、戦後すぐにスタートして保護司会や更生保護女性会といった団体の方々とご一緒してきた実績があるので、活動の場も広げやすいんですよ。じつは、少年院にもBBSの活動を広げたくて、直接伺って提案させていただいたんですが、そのときも信頼の厚さに助けられたんです。

「BBSなんですが、少年院でも活動させてもらえませんか」って持ちかけたら「ああ、BBSさんですね」とすぐに話が通じた。それはやはり、BBSの先輩方がずっと築いてこられた信頼関係のおかげなんですね。だから本当にやりたいことがあったら、自分たちで広げていくことも不可能ではないんです。
ふうか これまで培ってきたものを基盤にして、私たち自身でできることを増やしていくこともできるんですね。
本日はとても勉強になりました。どうもありがとうございました。

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BBS会員 高坂朝人さん

自身の経験を元に、ボランティアとして少年院出院者たちの支援活動を続けている。NPO法人 再非行防止サポートセンター愛知理事長。愛知県BBS連盟運営委員。

ゆうか(BBS会員)

ふうか(BBS会員)

BBS会とは?
BBS(Big Brothers and Sisters Movementの略)会は、さまざまな問題を抱える少年と、兄や姉のような身近な存在として接しながら、少年が自分自身で問題を解決したり、健全に成長していくのを支援する青年ボランティア団体です。児童福祉施設における学習支援活動や児童館における子どもとのふれあい行事なども実施しています。