シリーズ 「更生保護」って何だろう?

「更生保護女性会」何だろう? 地域に根ざし、人と人をつなげていく。

TEXT SIZE
小
大

地域の「おせっかいおばさん」として

ふうか 「子育て支援」も活動の一環として行われているようですね。
野中さん はい。吉川市は子育てのサークルがたくさんあって、ひとつの大きなネットワークができているんです。その団体ともつながりがあって。公民館で子育てがテーマの講演会があったりすると「子守りおばさん」としてお手伝いしたり、クリスマス会などのイベントにも参加させてもらってます。できるだけ、そういう人たちとのつながりをなくさないようにしたいなと。そうしていくと、更生保護女性会のおばさんたちっているんだなとか、こういうことをやってるんだなって自然と分かっていくじゃないですか。

ゆうか 親御さんたちにとっても「ご近所のおばさん」みたいな存在ってありがたいですよね。
野中さん そうなのよ。そうなることが私たちの望みなんです。更生保護女性会って言ったって、なんだか堅苦しいじゃない(笑)だからね、そうやって地道に関わっていくことが大事だなって思ってるんです。
ふうか そういった活動を通じて感じることはありますか?
野中さん 私の子供時代は、とくに私は下町で育ちましたから、ご近所づきあいがちゃんとあったんですね。地域のおばさん・おじさんに育てられたなという思いがあるんです。子どもが悪さをしても叱ってくれる大人がいたし、だれがどこの子かっていうのもみんな分かっていたし。
ふうか やはり地域のつながりは薄くなっているのでしょうか?
野中さん 今はご近所でもほとんど関わりがなくなっていますね。私が住んでいる団地でも、昔は子育てをしているお家どうしは行き来があって情報共有できていたけど、それすらも難しくなっているようですし。仕方がないことなのかもしれませんが、地域のつながりは希薄になっていることは事実だと思うんです。

ふうか 難しい問題ですよね。
野中さん だからこそ私たちは「おせっかいおばさん」の役目をね。
犯罪の予防はもちろんですが、子育て支援でも地域のゆるいつながりを保っておきたいんです。あまりでしゃばらずに、さり気なく関わりながら、何かヒントやアドバイスを差し上げることができたらいいなと。もしも悩みや相談事があったときには、気兼ねなくお話いただけるような、そんな私たちでありたいなと思っているんです。
ゆうか 地域から始まった活動なんですね。
人と人のつながりを大切にしていることも伝わってきます。
野中さん ありがとうございます。
自分たちが住んでいる地域に関わらずして更生保護女性会は成り立たないんですね。地域の中で活動しなければ、私たちの存在意義はなくなっちゃう。だから「いま私たちにできることは何か」って、いつも考えているんです。
ゆうか 本当にいろんな領域をカバーしているんですね。
野中さん ほかにも「愛の図書費」として、市内の小中学校に図書費を贈呈する活動も続けています。子どもたちに良い本を提供したいというのが目的なんですが、それとともに、生徒の保護者の方々に私たちの活動について知ってもらいたいという狙いもあるんです。
ゆうか なるほど。草の根のPR活動でもあるんですね。

野中さん そうするとつながっていくじゃないですか。それが私たちの目的なんです。つながっていって、更生保護について知ってくださる方、理解してくださる方が一人でも多くなれば。その輪がどんどん広がっていけばいいなと。
ふうか そこまで徹底してつながりを持とうとするのはなぜでしょうか?
野中さん みなさん自分の子育てでいっぱいいっぱいですよね。それで普通なんです。
でも、どこかで私たちと関わりを持ったり、活動について知ってもらっていれば、何かあったときに少しでもお役に立てるかもしれない。やっぱりね、問題を抱えてるご家庭はあるわけですよ、どんな地域でも。そんなとき、直接支援することは難しいかもしれないけれど、せめて親御さんのお話し相手ぐらいにはなれればね。人って話を聞いてもらうだけで楽になることもあるじゃないですか。だから「近所のおせっかいおばさん」で関わっていきたいなっていつも思ってるんです。
ふうか 子育て支援も地域をつなぐチャンネルのひとつなんですね。
野中さん そうなんです。更生保護を入口にして全部つながっているんです。
考えてみれば、更生保護ってすごいなって思いますよ。だって協力してくださる方はみんな無償でしょ。私たちだけじゃなく、保護司さん、BBS会員さんも全員がボランティアなんですよ。でも、だからこそ更生保護の考え方を理解してくださる人が少なくなってしまうと、どうしても尻すぼみになってしまう。とにかく持続させていくことが大変…って言っちゃうと本当に大変になっちゃうので言いませんが(笑)できるだけ活動を、浅くではなく、深く・広くしていこうと思っています。そのときそのときに必要なことを、ひとつでもいいから実行していく。あんまり頑張りすぎると続かないんで、無理せずゆっくりと進んでいければいいなと。
ふうか そうすると、さらに活動する領域が広がっていきそうですね。
野中さん 時代が変わってきたんですね。私たちも裏方さんに徹していた時代がありましたが、今は報道でも福祉や更生保護について語られる機会が増えて、社会から求められることも多くなってきてるんです。かといって、あんまり窮屈に考えちゃうと縛られてしまうので。自分たちの地域に合った、私たちにできることからやっていこうと。地道なことを一歩一歩。お預かりしたご奉仕を地域に還元していく。理想としては「更生保護女性会の人たちが地域にいてくれてよかったね」なんて言ってもらえると嬉しいんですけどね。まだそこまでいってないんです。なにせまだ知らない人が多いんですから(笑)

ふうか 更生保護全般について言えることかもしれませんが、普段からもっと話題にしてもいいですよね。へんにタブーにするのではなく、犯罪や非行からの立ち直りについて、社会全体で話し合える方が健全なような気もします。
野中さん あんまり特別なことにしてしまうと、関わり方も難しくなってしまいますよね。更生保護女性会も、その地域に更生保護施設があれば直接関わることもできますけれど、無い場合は寄付のような形で間接的に支援することもできるわけです。それは支援としての形が違うだけで、同じ考えのもとに活動していることになりますよね。

それと、社会の中での更生を支援していくのは当然のことですが、そもそも罪を犯す人をつくらないようにするにはどうすればいいのか。地域における「犯罪非行防止」も私たちの課題なんです。あやまちの芽が育たないようにする。そう考えると、「子育て支援」のような活動もつながってくるんですね。

ページの先頭へ

  • 1
  • 2
  • 3

更生保護女性会 野中八重さん

野中八重さん
(吉川地区更生保護女性会会長 ※取材当時)
更生保護女性会員。下町で生まれ育った経験から,PTA活動や民生委員・児童委員(現職)を経て,昭和53年から吉川地区で更生保護婦人(女性)会活動を開始。平成18年からは地区会長として,地域の架け橋となるような活動を展開。平成27年に会長を退任し,顧問となるも,現在も長年の活動経験を生かし,地域とつながる活動に従事している。

聞き手 ゆうか(BBS会員)

ゆうか(BBS会員)
大学3年生。大学のサークルでBBS会の活動に参加。学習ボランティアとして少年たちに勉強を教えたり、ともだち活動などを行っている。

聞き手 ふうか(BBS会員)

ふうか(BBS会員)
大学2年生。BBS会には1年前から所属しているが、活動への積極的な参加は今年から。現在、更生保護について勉強中。
更生保護女性会とは?
女性としての立場から、地域の犯罪防止および青少年の非行防止と、犯罪や非行をした人たちの更生を支援するボランティア活動。更生保護施設へのサポート活動、子育て支援など、幅広い活動を地域において実施しています。全国に約1,300の地区会があり、約18万5千名の会員が活躍しています。
吉川地区 更生保護女性会
昭和53年「吉川地区更生保護婦人会」として結成され、平成17年に「吉川地区更生保護女性会」と改称されました。会員数72名(平成27年時)。さいたま保護観察所や地域の保護司会、民生委員児童委員協議会と連携し、罪を犯した人や非行に走った少年が反省し、地域の中で一人の社会人として生きていけるようにサポートしています。

また、「愛の募金活動」による更生保護施設への助成、保護観察対象者などへの支援、更生保護への理解を深めるための講演会・研修の実施、「愛の図書費」「ミニ集会」「子育て支援」といった独自の活動も活発に行っています。