シリーズ 「更生保護」って何だろう?

「更生保護女性会」何だろう? 地域に根ざし、人と人をつなげていく。

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地域の「つながり」を作っていく

ゆうか ここまでのお話から、更生保護女性会は地域のつながりを補完する役割を果たしているようにも感じました。
野中さん やっぱり私自身、地域の人たちに育てられたという思いがあるんですよ。でもいまは集合住宅ですら交流がほとんどありませんよね。だから私は、何か問題を抱えていそうなご家庭ほど、そのお子さんや親御さんに挨拶するように心がけてるんです。ごく自然にね、仲良くしていこう、関わっていこうって。そんな風に挨拶を交わしていると、子どもの方でも「いつも挨拶してくれるあのうちのおばさん」っていう風に覚えていてくれて、何かあったときには私を訪ねてきてくれるなんてこともありますから。やっぱり挨拶って、人とつながるためにも大事ですよね。

ふうか 挨拶については、保護司さんもよくおっしゃっていますね。
野中さん 「たかが挨拶、されど挨拶」なんですよ。返してもらえないこともあるけど、私は自分が挨拶できればそれでいいやって思ってるから(笑) でもね、たとえば子育てサークルに参加しているような人たちはいいんです。一生懸命に自分から関わろうとしているので。問題は、そういったところに参加できない、参加しにくいような人。その人たちと、どうやって関わりを持って見守っていけるかなんですよ。そのための第一歩が挨拶ですね。一日一日を積み重ねていくことで、ようやく相手も「私に関係あるおばさんなのかな」って思ってくれる。挨拶はきっかけでもあるんです。
ゆうか それほど深い仲じゃなくても「あのおばさんになら話せるかな」みたいな。
浅くてもいいからつながりみたいなものがあると全然違いますよね。
野中さん そうなんです。「つながる」というのは本当に大事だな、といつも思ってるんです。地域のすべての人がそういった思いを持つのは難しいでしょうけど、たとえ一握りの人だけでもいいから関わろうとしてくれればね。更生保護女性会の会員でも、メンバーじゃなくても、地域に「おせっかいおばさん」が増えてくれれば嬉しいよね。よく会を卒業する方に「これからもキラ星のごとく地域で生きていってください」って言うんです。なんかカッコいいけどね、これは本心からなの。いろんな方が、入れ替わり立ち替わり更生保護女性会に関わって、思いを共有して、それから地域に散らばっていく。それで世の中が少しでもいい方向に変わっていけばいいのかなって。

ゆうか お話を伺ってきて感じたのは、更生保護女性会のような組織と人がいなければ、今の時代は地域の中につながりをつくっていくことが難しいのもしれないということですね。人と人との結びつきを取り持っていらっしゃる、素敵な活動だと思います。
野中さん ありがとうございます。
本当にね、それが私たちの役目だと思うんです。何か形にしてこうですってお見せするようなものではないんですよ、ボランティアの活動って。地域の中に暮らして、根を張って関わっていくこと。表立って目立つようなこともない、目に見えない地道な活動ですよね。でもふと「なんか、おせっかいおばさんがいたな」って思い出してもらえる。そんな存在になれれば一番いいわよね。
ふうか 地域をつないでいくような…
野中さん 今はやっぱり、そういうつながりが無いのよね。ごく狭い限られた集まりの中ではうまくいってるのかもしれないですけど、そこに関われない人のところには目も向かないし、光も届かない。そうすると、いつの間にか孤立しているような家庭も存外あるのかもしれない。だからやっぱり、気になるところには風を通していくというか、少しずつでも関わっていければなって思いますよね。
ふうか これから大事な役割を担っていく存在ですね。
野中さん でも、あんまり難しいこと言っちゃうとね、みんな重荷になっちゃうんで。「おせっかいおばさんでいこう!」って、それだけですよ。今いませんからね、いい意味でのご近所のおせっかいおばさんが。

ふうか これからの更生保護女性会には、どんな人に入ってほしいですか?
野中さん 若い人に入ってもらいたいですね。傾向として、どうしても年配の方が多くなりがちなんです。でもこないだね、40代のお母さんが入会されたんですけど、やっぱり発想が違うのよね。私たちは経験はあるんだけど、なんとなく考え方が固まっちゃってるのよ。だからね、PTAで活動してきて、子育ても一段落したような方にぜひ参加していただきたいですね。新しい人にどんどん回していってほしいんです。よく「女性だけの団体だといろいろと大変でしょう」なんて言われるんだけど、そんなこと全然ないのよ。みなさんしっかりしているし、本当に仲のいい組織なんです。じつは私、会長を卒業するのよ、ようやく(笑) 後任も立派な人たちがちゃんと育ってますから、いつ引退してもいいの。
ふうか そうなんですね。それはお疲れさまでした。
野中さん もちろん一会員として引き続き支えていきますけどね。どうですか? なんかいろいろ話したけど、やっぱり分かりにくいわよね。私だって実際のところは分かんないもの(笑)みんな手探りなんですよ。手探りで、いかに地域に関わっていけるのか、つねに試行錯誤してるのが実情なんです。
ゆうか でも、すごく強い思いを持ってらっしゃるんだなっていうのが伝わってきて。とても感動しました。
ふうか 更生保護を入口としながら、地域でできることを、地域の中で実践していく活動なんですね。
野中さん そう。それしかないんです。研修会や勉強会も重ねているけど、いちばん大事なのは地域との関わりだから。それなくしては私たちの活動はありえないんです。地域からお預かりしたものを、ものだったり、行動だったり、心でしっかりとお返ししていく。

ふうか 世間の空気が、排除ではなく受け入れる方に動いていく。たとえば、更生保護女性会の方や元メンバーの方を起点にして、そのまわりの数人でもいいから少しずつ波紋のように広がっていくような、そんな印象を受けました。
野中さん そんな風に受け止めていただければありがたいですね。さっきも言ったように、この活動に関わった人がそれぞれ地域に散らばっていって、少しでも意識を持っていてくだされば、いつか世の中も違ってくると思うんです。
ゆうか 急には変わらなくても…
野中さん そう。劇的になんか変わらないのよ。それこそ10年も、20年も、30年も。そのくらい時間がかかると思うんだけど。そんなもんですよ。でも、やらなきゃダメなんですよ。やらないことには、一歩踏み出さないことには、なんにも変わらない。動かなければ止まったままですよね。ささやかなことでも行動に移していかないと何事も始まらないと思います。
ゆうか どんな地域でも、どんな時代でも、原点にあるのは人と人なんだな、ということをあらためて感じました。
野中さん それがいちばん大事ですね。
地域のことも、犯罪予防も、子育ても、関わらないと分からないんです。でも、どうやって自分の住んでいる地域に関わったらいいのか今は見えにくくなってますよね。そういった部分では、いろんな形の「きっかけづくり」をしていくことも、私たちに求められているのかもしれませんね。

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更生保護女性会 野中八重さん

野中八重さん
(吉川地区更生保護女性会会長 ※取材当時)
更生保護女性会員。下町で生まれ育った経験から,PTA活動や民生委員・児童委員(現職)を経て,昭和53年から吉川地区で更生保護婦人(女性)会活動を開始。平成18年からは地区会長として,地域の架け橋となるような活動を展開。平成27年に会長を退任し,顧問となるも,現在も長年の活動経験を生かし,地域とつながる活動に従事している。

聞き手 ゆうか(BBS会員)

ゆうか(BBS会員)
大学3年生。大学のサークルでBBS会の活動に参加。学習ボランティアとして少年たちに勉強を教えたり、ともだち活動などを行っている。

聞き手 ふうか(BBS会員)

ふうか(BBS会員)
大学2年生。BBS会には1年前から所属しているが、活動への積極的な参加は今年から。現在、更生保護について勉強中。
更生保護女性会とは?
女性としての立場から、地域の犯罪防止および青少年の非行防止と、犯罪や非行をした人たちの更生を支援するボランティア活動。更生保護施設へのサポート活動、子育て支援など、幅広い活動を地域において実施しています。全国に約1,300の地区会があり、約18万5千名の会員が活躍しています。
吉川地区 更生保護女性会
昭和53年「吉川地区更生保護婦人会」として結成され、平成17年に「吉川地区更生保護女性会」と改称されました。会員数72名(平成27年時)。さいたま保護観察所や地域の保護司会、民生委員児童委員協議会と連携し、罪を犯した人や非行に走った少年が反省し、地域の中で一人の社会人として生きていけるようにサポートしています。

また、「愛の募金活動」による更生保護施設への助成、保護観察対象者などへの支援、更生保護への理解を深めるための講演会・研修の実施、「愛の図書費」「ミニ集会」「子育て支援」といった独自の活動も活発に行っています。