シリーズ 「更生保護」って何だろう?

「更生保護施設」に行ってみる 第1回 心のケアを通じて人間性の回復をめざす。

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めざしているのは「人間性の回復」

ふうか やはり、住まいや仕事が大切なんですね。
小畑さん たしかに、住居や就労は社会復帰を支援するうえで欠かせません。
でも、両全会ではそれだけで満足しているわけではないんです。

私たちがめざしているのは「人間性の回復」です。
そのための心のケアが、いちばん大切だと思います。そしていちばん難しい。
ふうか 人間性の回復とは?
小畑さん まず前提として、犯罪や非行をしてきたわけですから、
そこに対するしょく罪と反省が根底にないといけません。
あやまちを悔いる気持ちがないと、
本当の社会復帰にはならないと私は考えています。
なので、そういった意思を復活させることが最初の一歩になります。

つぎに、社会生活に適応させること。
住居や就労というのは、ある意味で物理的な条件です。
けれども、それだけでは足りない。やはり心のケアをしてあげないと。
そのために、私たちは寮生に対していろいろな働きかけをしていくわけです。

ふうか そこまで踏み込むことが必要なのですか?
小畑さん なぜかというと、全員がそうとはかぎらないのですが、
やはり小さな頃から厳しい生育状況にあった人が少なくないんです。
親から虐待を受けてきた人もいる。健やかな情操を育む環境にいなかった結果、
社会になじめなくなってしまったケースが大部分です。
ふうか 環境も背景にあるんですね。
小畑さん だからこそ、私たちは日々の生活でのふれあいを通じて、
徹底的に心のケアをしていくのです。
一人ひとりの人間性を、なんとか取り戻してあげたい。
そうしないと、本当の意味での社会復帰をかなえることにはならないですから。
ゆうか 先ほど、しょく罪について触れられていましたが、
反省を促すというのは難しいことではないでしょうか?
小畑さん 個々のあやまちを追求するのではなく、今までの生活について振り返って、
何が間違っていたのか気づかせるように指導していくことが大事ですね。
それまでの生き方の結果、犯罪や非行に至ったわけですから。
そこから反省させていく。
ゆうか あやまちそのものというよりは、
これまでの生き方を反省させるということですか?

小畑さん そうですね。
それに、被害者の立場からみて、何がもっともつぐないになるかというと、
やはり加害者自身の更生だと思うんです。人間性を回復することで再犯もしない。
社会の一員としてきちんと生きていく。それが本当のつぐないですよね。
ゆうか なるほど。それは希望につながりますね。
小畑さん これまでの自分と向き合って、
犯罪に至った経緯や生活周辺の問題点についてしっかりと認識する。
そのうえで、これからの生き方を変えていく。
社会人として「普通の生活」に復帰すること。
それが本来的なしょく罪だと私は思っています。

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両全会理事長 小畑輝海さん(両全会 理事長)

小畑輝海さん
(両全会 理事長)
更生保護法人 両全会理事長。保護司・篤志面接委員。平成19年より両全会理事長を務め、長期的なケアをめざす自立準備ホーム「ホームみどり」や、薬物離脱のための認知行動療法プログラムを取り入れた「ローズカフェ」プロジェクトなど、画期的な取り組みを展開している。

聞き手 ゆうか(BBS会員)

ゆうか(BBS会員)
大学3年生。大学のサークルでBBS会の活動に参加。学習ボランティアとして少年たちに勉強を教えたり、ともだち活動などを行っている。

聞き手 ふうか(BBS会員)

ふうか(BBS会員)
大学2年生。BBS会には1年前から所属しているが、活動への積極的な参加は今年から。現在、更生保護について勉強中。
更生保護施設とは?
刑務所や少年院を出た人の中には、生活環境に恵まれなかったり、本人に社会生活上の問題があるなどの理由で、すぐに自立更生ができない人がいます。こうした人たちを一定の期間保護し、その円滑な社会復帰を助け、再犯を防止する役割を担っているのが更生保護施設です。更生保護施設は、宿泊場所や食事を提供するとともに、更生を果たすために必要な指導や援助を行い、入所者の自立と再出発を支えています。
更生保護施設 両全会
1917年、市ヶ谷刑務所の教誨師であった藤井恵照により創設。現在の定員は女子20名(成人17名・少年3名)。女性のための更生保護施設として、「パソコン教室」「リハビリメイク教室」などの先進的な教育・処遇を導入。2011年、自立準備ホーム「ホームみどり」を開設。2012年には、薬物依存者の再犯防止と自立による社会復帰を目的として「ローズカフェ」プロジェクトを開始した。
BBS会とは?
BBS(Big Brothers and Sisters Movementの略)会は、さまざまな問題を抱える少年と、兄や姉のような身近な存在として接しながら、少年が自分自身で問題を解決したり、健全に成長していくのを支援する青年ボランティア団体です。児童福祉施設における学習支援活動や児童館における子どもとのふれあい行事なども実施しています。