シリーズ 「更生保護」って何だろう?

「更生保護施設」に行ってみる 第2回 心と心でぶつかること。真剣に向きあうこと。

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遠慮しない。本音でぶつかりあう。

ゆうか 寮生の方と接するときに気をつけていることはありますか?
山田さん そうですね。叱るときは真剣です。私は叱り担当なので。
ゆうか 叱り担当?
山田さん そう。わりとストレートに怒る方だから。
優しい先生はなだめる担当。まあ役割分担ですよね。

ふうか どうやって叱るんですか?
山田さん 叱るときは徹底的に叱ります。
もちろん、相手を傷つけたり、侮辱するようなことは言いませんよ。
怒るときほど言葉を選びます。
外屋敷さん 泣くときも一緒に泣くわよね。涙もろいから。
山田さん そうね、泣くときも真剣に、一緒になって泣いてます。
泣きながら感情をぶつけてくる子もいるから、
そんなときはこっちも泣いちゃったりするのよね。
でも、涙ボロボロ流して向きあった後に、
「先生、泣いてくれてありがとう」って言ってくれたりね。

ふうか そこまで深く向きあうんですね。
山田さん まず最初に「なんでもぶつけてきなさい」って伝えるんです。心の中に何か残ってたら、なんにもできないですよね。
変に残っていたら、いつかまた爆発しちゃうし。
だから、少しでも溜まったら、私にぶつけてきなさいと。
いくらでも受けて立つからって。
ゆうか それは…すごい覚悟ですね。
山田さん 向こうも本音でぶつかってくるし。こちらも真剣に怒るし。
でもね、私の場合は、ばばばっと怒るときもあるんですけど、
後でケアもちゃんとしますから。怒るだけじゃなくて。
ふうか どうするんですか?
山田さん 言うだけ言ったら、こんどは「頭冷やしてみて」って
いったん時間を置いたりします。本人にも考える時間をあげるんです。
それで、少し時間が経った頃にもう一度呼んで、
「どこがいけなかったか分かった?」って問いかけてみて。
それからひとつずつ説明していくんです。

ふうか なるほど。
山田さん こちらも強く言ったようなときには、
「私にも悪いところがあるけど、あなたにも悪いところがあるんだよ」
とか「そういうところはおたがいに直していこうね」なんて話して。
そうすると、わりと納得してくれるんですね。
外屋敷さん きっと「普通に叱られる」ということが無かったんでしょうね。逆に虐待や暴力、無関心にさらされてきた人が多い。
彼女たちにとっては、叱られることもひとつの体験なんです。
ふうか 叱ることもコミュニケーションなんですね。

山田さん ときどき、卒寮した人から「今、心が折れそうだから怒ってください」なんて電話がかかってくるときがあるんです。
そしたら「いいよ、分かった」って話を聞いてあげる。

ここを出るときに、いつでも困ったことがあったら電話してきていいんだからね。怒って欲しいときは遠慮なく来なさいって言ってあるんです。
だからやっぱりね、そうやって頼ってきてくれると嬉しいですよ。
「ああ、怒った甲斐があった」って。

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両全会理事長 小畑輝海さん(両全会 理事長)

小畑輝海さん
(両全会 理事長)
更生保護法人 両全会理事長。保護司・篤志面接委員。平成19年より両全会理事長を務め、長期的なケアをめざす自立準備ホーム「ホームみどり」や、薬物離脱のための認知行動療法プログラムを取り入れた「ローズカフェ」プロジェクトなど、画期的な取り組みを展開している。

山田美代子さん(両全会 補導主任)

山田美代子さん
(両全会 補導主任)
栃木刑務所などの刑事施設で刑務官を歴任した後、両全会へ。補導主任として寮生の生活指導と就労支援を担当している。ときに厳しく、ときに温かく一人ひとりの寮生と関わる「叱る担当」。

外屋敷岩子さん(両全会 福祉補導員)

外屋敷岩子さん
(両全会 補導員)
八王子医療刑務所にて看護師として勤務した後、両全会へ。福祉関連の窓口として福祉補助が必要な寮生の生活保護(医療扶助)の申請の手助けや、通院の付き添いなどのサポートに携わる。

聞き手 ゆうか(BBS会員)

ゆうか(BBS会員)
大学3年生。大学のサークルでBBS会の活動に参加。学習ボランティアとして少年たちに勉強を教えたり、ともだち活動などを行っている。

聞き手 ふうか(BBS会員)

ふうか(BBS会員)
大学2年生。BBS会には1年前から所属しているが、活動への積極的な参加は今年から。現在、更生保護について勉強中。
更生保護施設とは?
刑務所や少年院を出た人の中には、生活環境に恵まれなかったり、本人に社会生活上の問題があるなどの理由で、すぐに自立更生ができない人がいます。こうした人たちを一定の期間保護し、その円滑な社会復帰を助け、再犯を防止する役割を担っているのが更生保護施設です。更生保護施設は、宿泊場所や食事を提供するとともに、更生を果たすために必要な指導や援助を行い、入所者の自立と再出発を支えています。
更生保護施設 両全会
1917年、市ヶ谷刑務所の教誨師であった藤井恵照により創設。現在の定員は女子20名(成人17名・少年3名)。女性のための更生保護施設として、「パソコン教室」「リハビリメイク教室」などの先進的な教育・処遇を導入。2011年、自立準備ホーム「ホームみどり」を開設。2012年には、薬物依存者の再犯防止と自立による社会復帰を目的として「ローズカフェ」プロジェクトを開始した。
BBS会とは?
BBS(Big Brothers and Sisters Movementの略)会は、さまざまな問題を抱える少年と、兄や姉のような身近な存在として接しながら、少年が自分自身で問題を解決したり、健全に成長していくのを支援する青年ボランティア団体です。児童福祉施設における学習支援活動や児童館における子どもとのふれあい行事なども実施しています。