シリーズ 「更生保護」って何だろう?

「更生保護施設」に行ってみる 第2回 心と心でぶつかること。真剣に向きあうこと。

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「ローズカフェ」という新たな試み

ゆうか 新しい取り組みに挑戦されていると伺いましたが?
小畑さん 2012年の秋より、薬物依存からの離脱を本格的にサポートする「ローズカフェ」プロジェクトをスタートさせました。
ゆうか 薬物の問題はやはり深刻なのでしょうか?

小畑さん 現在、女性の犯罪・非行で大きな問題になっているのが薬物です。全国の刑事施設において、女性収容者の約40%が薬物事犯というデータもあります。
ゆうか 4割が薬物に関係した犯罪とは…驚きました。
小畑さん だからこそ、薬物からの離脱指導というのは、いま絶対に必要なんです。
ゆうか 早急な対策が求められているんですね。
小畑さん これまでもさまざまな取り組みを行ってきましたが、
薬物の問題が難しいのは、やはり依存症であるということですよね。
心理的な要因が大きいので一筋縄ではいきません。
離脱には時間もかかるし再犯率も高い。

そこで、ストレスコーピング・サポートオフィス所長の伊藤絵美さんにご協力いただき、「認知行動療法」を採り入れた薬物離脱指導プログラムを実施することにしました。

ふうか それはどういったものなのですか?
小畑さん 「認知行動療法」とは、認知(考え方や受け取り方)に働きかけることによって、行動をコントロールできるようにしていく心理学的なアプローチのことです。その効果は科学的にも認められていて、
世界中で多くの人によって活用されています。
ふうか 薬物離脱にも有効なのでしょうか?
小畑さん はい。薬物に依存する人の多くは、
薬物を使うことによってストレスや不安から逃れられると思っています。
そして、一度はやめようと心に誓っても、同じような状況に陥ると、
何度もあやまちをくり返してしまう。

「なぜ薬に手を出したのか」「なぜつまずいたのか」をふり返り、
次につまずかないために考え方や行動を変えていくのが、
認知行動療法による薬物離脱指導となります。

ふうか どのようなプログラムが実施されるのですか?
小畑さん 臨床心理士によるグループ方式での面接指導が中心となります。
寮生は専門的な離脱指導を受けることで自己をコントロールすることを学び、
社会生活を送りながら依存症からの回復をめざしていきます。
ふうか どのくらいの間、関わっていくのでしょうか?
小畑さん ひとりの対象者につき3年間にわたって支援していきます。
退寮後も面接に通ってもらったり、手紙などでのやりとりを続けていきます。
これは、薬物からの離脱にはある程度の時間がどうしても必要なことと、
就労による自立を通じて社会復帰をめざすという考え方から導き出されたスタイルです。

また、入所期間が短い寮生には、早稲田大学の藤野京子教授による認知行動療法を用いた薬物離脱指導コースも設けられています。

ふうか なるほど。それにしても「ローズカフェ」とは素敵な名前ですね。
小畑さん プロジェクトチームからの発案です。
花言葉で「幸福」を意味するローズと、気軽に集うことのできる「カフェ」という、
ふたつの言葉を組み合わせたネーミングです。
将来的にはプログラムの卒業生にも、後から参加してくる人の先輩として、
薬物離脱と社会復帰をともに支える存在になってもらいたいと考えています。

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次回へつづきます。

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両全会理事長 小畑輝海さん(両全会 理事長)

小畑輝海さん
(両全会 理事長)
更生保護法人 両全会理事長。保護司・篤志面接委員。平成19年より両全会理事長を務め、長期的なケアをめざす自立準備ホーム「ホームみどり」や、薬物離脱のための認知行動療法プログラムを取り入れた「ローズカフェ」プロジェクトなど、画期的な取り組みを展開している。

山田美代子さん(両全会 補導主任)

山田美代子さん
(両全会 補導主任)
栃木刑務所などの刑事施設で刑務官を歴任した後、両全会へ。補導主任として寮生の生活指導と就労支援を担当している。ときに厳しく、ときに温かく一人ひとりの寮生と関わる「叱る担当」。

外屋敷岩子さん(両全会 福祉補導員)

外屋敷岩子さん
(両全会 補導員)
八王子医療刑務所にて看護師として勤務した後、両全会へ。福祉関連の窓口として福祉補助が必要な寮生の生活保護(医療扶助)の申請の手助けや、通院の付き添いなどのサポートに携わる。

聞き手 ゆうか(BBS会員)

ゆうか(BBS会員)
大学3年生。大学のサークルでBBS会の活動に参加。学習ボランティアとして少年たちに勉強を教えたり、ともだち活動などを行っている。

聞き手 ふうか(BBS会員)

ふうか(BBS会員)
大学2年生。BBS会には1年前から所属しているが、活動への積極的な参加は今年から。現在、更生保護について勉強中。
更生保護施設とは?
刑務所や少年院を出た人の中には、生活環境に恵まれなかったり、本人に社会生活上の問題があるなどの理由で、すぐに自立更生ができない人がいます。こうした人たちを一定の期間保護し、その円滑な社会復帰を助け、再犯を防止する役割を担っているのが更生保護施設です。更生保護施設は、宿泊場所や食事を提供するとともに、更生を果たすために必要な指導や援助を行い、入所者の自立と再出発を支えています。
更生保護施設 両全会
1917年、市ヶ谷刑務所の教誨師であった藤井恵照により創設。現在の定員は女子20名(成人17名・少年3名)。女性のための更生保護施設として、「パソコン教室」「リハビリメイク教室」などの先進的な教育・処遇を導入。2011年、自立準備ホーム「ホームみどり」を開設。2012年には、薬物依存者の再犯防止と自立による社会復帰を目的として「ローズカフェ」プロジェクトを開始した。
BBS会とは?
BBS(Big Brothers and Sisters Movementの略)会は、さまざまな問題を抱える少年と、兄や姉のような身近な存在として接しながら、少年が自分自身で問題を解決したり、健全に成長していくのを支援する青年ボランティア団体です。児童福祉施設における学習支援活動や児童館における子どもとのふれあい行事なども実施しています。