シリーズ 「更生保護」って何だろう?

「更生保護施設」に行ってみる 第3回 社会の壁の高さを下げていく努力を。

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あきらめを自信に変えていく。

ゆうか 先ほど、感情をぶつけてくる方のお話がありましたけど、
なかには表現できない寮生もいらっしゃるのではないですか?
外屋敷さん そうですね。私たちに発散してくれればまだいいんですけれど。
それができない人の方が、逆に難しいかもしれません。
何を考えているのか分からないし、黙ってぽっとといなくなっちゃうこともあります。
ゆうか 感情の出し方が分からないということですか?
外屋敷さん 小さな頃からずっと、家庭や学校で抑圧されてきたから、
もう怒られ馴れてるというか、あきらめちゃってるんですね。
ゆうか あきらめてるとは?
外屋敷さん 自分は何をやってもできない。他の人から認められない。無視される。
そんな環境でずっと我慢してきたんでしょうね。

ふうか そういったケースが多いのでしょうか。
外屋敷さん 薬物事犯も、その発端にはかならず悩みがあります。悩みに対応できないから、自分というものを忘れるために薬物に逃げる。それも驚くほど小さな頃から始まるケースも少なくありません。そして朦朧状態で万引きしたりするんですけど、そのときには「自分」が無いわけですよね。
ふうか なるほど…。根深い問題なんですね。
外屋敷さん だから、立ち直りのためには、どうやって「自信」を持たせるかということが大事になってきます。

それに、近年では高齢者や障害のある寮生も少なくありません。
そうした場合は、やはり接し方や処遇も考えなければならないので…。
これからの課題ですね。

山田さん とはいえ、叱るときは均等に叱らないと。
大事なのは、みんなの前で叱らないこと。かならず一対一で叱る。
でもね、怒られるのも嬉しいんですよ。構ってもらえるから。
外屋敷さん 叱られるってことは、やさしさなんです。
自分に関心を持ってもらってるっていう証でもある。
彼女たちにとっては、それがすごく嬉しいんです。
山田さん みんな、根が寂しがり屋さんよね。
外屋敷さん 小さいときに抱きしめられたことが無いんです。
だからすごくかまってもらいたい。大人になっても。
ふうか そうなんですね。
外屋敷さん 生い立ちから環境から、すべてが千差万別なんですね。
よくよく話を聞いてみると、「もしも自分がそういう環境にいたら、
ひょっとしたら犯罪をおかすかもしれないな」ということはあります。
でもそれを認めるわけにはいかないから。

ふうか そんなときはどうするんですか?
外屋敷さん 「こういう風に考えればよかったかも」「こうできたかもしれないね」というように、あやまちをしなくてもすんだ可能性について、一緒に考えるようにしています。対処の方法や考え方のサンプルをできるだけ多く挙げて共有するんです。

そういった会話の断片でもいいから、頭の片隅に留めておいてもらえればいい。次はそれがストッパーになって、あやまちをくり返すことを止められればいいな、と願っています。

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両全会理事長 小畑輝海さん(両全会 理事長)

小畑輝海さん
(両全会 理事長)
更生保護法人 両全会理事長。保護司・篤志面接委員。平成19年より両全会理事長を務め、長期的なケアをめざす自立準備ホーム「ホームみどり」や、薬物離脱のための認知行動療法プログラムを取り入れた「ローズカフェ」プロジェクトなど、画期的な取り組みを展開している。

山田美代子さん(両全会 補導主任)

山田美代子さん
(両全会 補導主任)
栃木刑務所などの刑事施設で刑務官を歴任した後、両全会へ。補導主任として寮生の生活指導と就労支援を担当している。ときに厳しく、ときに温かく一人ひとりの寮生と関わる「叱る担当」。

外屋敷岩子さん(両全会 福祉補導員)

外屋敷岩子さん
(両全会 補導員)
八王子医療刑務所にて看護師として勤務した後、両全会へ。福祉関連の窓口として福祉補助が必要な寮生の生活保護(医療扶助)の申請の手助けや、通院の付き添いなどのサポートに携わる。

聞き手 ゆうか(BBS会員)

ゆうか(BBS会員)
大学3年生。大学のサークルでBBS会の活動に参加。学習ボランティアとして少年たちに勉強を教えたり、ともだち活動などを行っている。

聞き手 ふうか(BBS会員)

ふうか(BBS会員)
大学2年生。BBS会には1年前から所属しているが、活動への積極的な参加は今年から。現在、更生保護について勉強中。
更生保護施設とは?
刑務所や少年院を出た人の中には、生活環境に恵まれなかったり、本人に社会生活上の問題があるなどの理由で、すぐに自立更生ができない人がいます。こうした人たちを一定の期間保護し、その円滑な社会復帰を助け、再犯を防止する役割を担っているのが更生保護施設です。更生保護施設は、宿泊場所や食事を提供するとともに、更生を果たすために必要な指導や援助を行い、入所者の自立と再出発を支えています。
更生保護施設 両全会
1917年、市ヶ谷刑務所の教誨師であった藤井恵照により創設。現在の定員は女子20名(成人17名・少年3名)。女性のための更生保護施設として、「パソコン教室」「リハビリメイク教室」などの先進的な教育・処遇を導入。2011年、自立準備ホーム「ホームみどり」を開設。2012年には、薬物依存者の再犯防止と自立による社会復帰を目的として「ローズカフェ」プロジェクトを開始した。
BBS会とは?
BBS(Big Brothers and Sisters Movementの略)会は、さまざまな問題を抱える少年と、兄や姉のような身近な存在として接しながら、少年が自分自身で問題を解決したり、健全に成長していくのを支援する青年ボランティア団体です。児童福祉施設における学習支援活動や児童館における子どもとのふれあい行事なども実施しています。