シリーズ 「更生保護」って何だろう?

「更生保護施設」に行ってみる 第3回 社会の壁の高さを下げていく努力を。

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働くことの意味、そして社会の壁。

ふうか 両全会では完全就労をめざしている、と最初におっしゃっていましたが、
その理由について伺えますか?
山田さん はい。両全会では「なんでこうなったのか?」ということを、本人とじっくり話し合うようにしています。
そうすると、たいていのあやまちは、仕事を辞めているときに起きていることが多いんです。

ふうか そこがポイントになるわけですね。
山田さん そうです。あやまちだけを責めても仕方がないので。
「なんでこうなったか?」という一点から、一緒に人生をふり返ってみる。
この時期まで働いていて、ここで仕事を辞めて、それからあやまちが起きてる。そんな風にさかのぼってみると、本人も思い当たることがあるんですね。

そうすると「仕事に就いていれば、こうはならなかった」という気づきにもつながります。
これはすごく単純に聞こえますけど、だからこそ説得力があるんです。
ふうか 客観的に自分を見つめ直す機会にもなりますね。
山田さん もちろん原因は仕事だけではなく、その人の置かれていた環境や生育過程にも関係しています。
それでもこれからのことを考えれば「自分の生活」をつくることが大事。
そのためにはやっぱり仕事が必要なんです。

悪い環境から抜け出す。生活パターンを変える。
あやまちをくり返さないためにも、それまでの生活のリズムをどこかで断たないといけない。そして断つなら今だよ、と。
この機会に原因をきちんと認識して、社会に戻ってからの生活に活かさないと。

ゆうか だから就労にこだわるんですね。
小畑さん 働いていると、変わるんです。
規則正しい生活パターンを取り戻すだけでなく、本人の意識が変わってくる。たとえば清掃や調理の仕事でも、一生懸命にしていれば感謝される。
「ありがとう」と言われることや、職場の人たちに信用されることで、働くことの意味が分かってくるんですね。本来の社会性を取り戻すことができる。

ゆうか なるほど。就労の大切さが分かってきました。
小畑さん 食事を与える。住む場所を与える。それだけではダメなんです。
更生保護施設は、社会への復帰をサポートする処遇施設であるべき。
私たちはそう考えて活動しています。

ゆうか 最後になりますが、これからの課題についてお聞かせください。
小畑さん 就労における最大の問題は、やはり社会の厚い壁です。
対象者に対する偏見や先入観は、いまだに根強い。
ちなみに、両全会から仕事に就いて勤務先で違法行為があった事例は、
少なくとも私が関わってからの6年間ではゼロなんです。
ふうか それは素晴らしいことですね。
小畑さん もちろん、あやまちをおかした本人の責任は大きい。
でも、これまでお話してきたように、きわめて厳しい環境で育った人が多いことも事実なんです。それはみなさんにも知っておいてもらいたい。

そのうえで、心から反省してやり直したいと決意している人に、もう少し社会の壁の高さを下げることはできないか。
立ち直りへの努力に対する社会の理解とサポートがほしい。
それが今後の課題だと思っています。
つまづいたら、もう一度立ち上がればいい。そんな社会のコンセンサスをつくるために、私たちももっと努力していかなければならないですね。

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両全会理事長 小畑輝海さん(両全会 理事長)

小畑輝海さん
(両全会 理事長)
更生保護法人 両全会理事長。保護司・篤志面接委員。平成19年より両全会理事長を務め、長期的なケアをめざす自立準備ホーム「ホームみどり」や、薬物離脱のための認知行動療法プログラムを取り入れた「ローズカフェ」プロジェクトなど、画期的な取り組みを展開している。

山田美代子さん(両全会 補導主任)

山田美代子さん
(両全会 補導主任)
栃木刑務所などの刑事施設で刑務官を歴任した後、両全会へ。補導主任として寮生の生活指導と就労支援を担当している。ときに厳しく、ときに温かく一人ひとりの寮生と関わる「叱る担当」。

外屋敷岩子さん(両全会 福祉補導員)

外屋敷岩子さん
(両全会 補導員)
八王子医療刑務所にて看護師として勤務した後、両全会へ。福祉関連の窓口として福祉補助が必要な寮生の生活保護(医療扶助)の申請の手助けや、通院の付き添いなどのサポートに携わる。

聞き手 ゆうか(BBS会員)

ゆうか(BBS会員)
大学3年生。大学のサークルでBBS会の活動に参加。学習ボランティアとして少年たちに勉強を教えたり、ともだち活動などを行っている。

聞き手 ふうか(BBS会員)

ふうか(BBS会員)
大学2年生。BBS会には1年前から所属しているが、活動への積極的な参加は今年から。現在、更生保護について勉強中。
更生保護施設とは?
刑務所や少年院を出た人の中には、生活環境に恵まれなかったり、本人に社会生活上の問題があるなどの理由で、すぐに自立更生ができない人がいます。こうした人たちを一定の期間保護し、その円滑な社会復帰を助け、再犯を防止する役割を担っているのが更生保護施設です。更生保護施設は、宿泊場所や食事を提供するとともに、更生を果たすために必要な指導や援助を行い、入所者の自立と再出発を支えています。
更生保護施設 両全会
1917年、市ヶ谷刑務所の教誨師であった藤井恵照により創設。現在の定員は女子20名(成人17名・少年3名)。女性のための更生保護施設として、「パソコン教室」「リハビリメイク教室」などの先進的な教育・処遇を導入。2011年、自立準備ホーム「ホームみどり」を開設。2012年には、薬物依存者の再犯防止と自立による社会復帰を目的として「ローズカフェ」プロジェクトを開始した。
BBS会とは?
BBS(Big Brothers and Sisters Movementの略)会は、さまざまな問題を抱える少年と、兄や姉のような身近な存在として接しながら、少年が自分自身で問題を解決したり、健全に成長していくのを支援する青年ボランティア団体です。児童福祉施設における学習支援活動や児童館における子どもとのふれあい行事なども実施しています。