保護司について

 保護司は、他の一般的なボランティアと異なり、一定の要件を満たす人の中から法務大臣が委嘱することとされており、その使命、委嘱の手続、職務等は、保護司法という法律に定められています。
 保護司の定数は全国で52,500人を超えないものとされており、保護司の活動区域である保護区ごとに定数が定められています(保護司法第2条)。

 保護司法の第1条は、保護司の使命を「社会奉仕の精神をもつて、犯罪をした者の改善及び更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、もつて地域社会の浄化をはかり、個人及び公共の福祉に寄与すること」と定めています。

 これを踏まえ、全国保護司連盟では、「保護司信条」を定めています。

保護司信条

私たち保護司は、社会奉仕の精神をもって、

  • 公平と誠実を旨とし、過ちに陥った人たちの更生に尽くします。
  • 明るい社会を築くため、すべての人々と手を携え、犯罪や非行の予防に努めます。
  • 常に研鑽に励み、人格識見の向上に努めます。

平成6年5月26日
全国保護司連盟社員総会において制定

 更生保護に関する基本法である更生保護法 第32条は、「保護司は、保護観察官で十分でないところを補い」、「地方更生保護委員会又は保護観察所の所掌事務に従事する」と定めています。
 保護観察官は、心理学、教育学、社会学等の専門的知識に基づいて犯罪者処遇や犯罪予防活動に従事する国家公務員で、地方更生保護委員会及び保護観察所で勤務しています。
 保護司は、保護観察官と協働し、民間人としての柔軟性や地域の事情に通じているという特性を活かしながら、主に以下の職務に従事します。

 犯罪や非行をした人たちと定期的に面接を行い、更生を図るための約束事(遵守事項)を守るよう指導するとともに、生活上の助言や就労の手助け等を行います。毎月の保護観察の実施状況を報告書にまとめて保護観察所に提出し、保護観察官と協議しながら、無事に保護観察を終了できるよう働き掛けを続けます。

 刑務所や少年院などに収容中の段階から、釈放後の帰住予定地の調査、引受人との話合い等を行い、受け入れ態勢を整えます。釈放後にスムーズに社会生活に移行するために重要な活動です。

 犯罪の予防を図るための啓発、宣伝、地域の関係づくりなどの活動も保護司の重要な職務です。
 その中心的な活動である“社会を明るくする運動”は、国民一人一人がそれぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築くための全国的な運動です。法務省の主唱により、毎年7月を強調月間として、講演会、シンポジウム、ワークショップ、スポーツ大会など様々な活動が全国各地で展開されています。

法務省"社会を明るくする運動"のページ

 保護司は次の4つの条件をすべて具備する人から委嘱するとされています(保護司法第3条第1項)。

  • 人格及び行動について、社会的信望を有すること
  • 職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること
  • 生活が安定していること
  • 健康で活動力を有していること

 一方で、次に該当する人は保護司にはなれないとされています(同法第4条)。

  • 禁錮以上の刑に処せられた人
  • 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党等を結成し、又は加入した人
  • 心身の故障のため職務を適正に行うことができない人として法務省令で定めるもの

 保護観察所の長が、保護司の資格条項及び欠格条項の関係について調査の上、候補者を選定し、保護観察所ごとに設けられている保護司選考会に諮問して、意見を聴きます。その結果推薦相当とされた人について法務大臣に推薦し、その人のうちから法務大臣が委嘱します(保護司法第3条)。
 委嘱された保護司は、都道府県の区域を分けて定められたいずれかの保護区に配属されます(同法第2条)。

 保護司は、非常勤の国家公務員とされています。給与は支給されず、通信費や交通費など、職務に要した費用の全部又は一部が実費弁償金として支給されます。
 任期は2年ですが、再任は妨げられません。多くの保護司が、10年、20年といった長期にわたり活動を続けています。最長で78歳(一部の職務については、本人が希望すれば80歳)になるまでは保護司として活動することが可能です。
 保護司には、職務上知り得た関係者(保護観察対象者等)の秘密の保持が求められます。また、保護司としての職務を遂行中に被った災害(活動中又は活動場所への行き帰りの負傷等)に対しては、国家公務員災害補償法が適用されます。

 保護観察所により、主に次の研修が実施されています。

①新任保護司研修 原則として保護司を委嘱した直後に行われます。
②処遇基礎力強化研修 原則として委嘱後2年目に行われます。
③指導力強化研修 原則として委嘱後3~4年目に行われます。
④地域別定例研修 全保護司を対象に、年に数回、原則として保護区ごとに行われます。
⑤特別研修 テーマを決めて、保護観察所の長が特に必要と認めた保護司を対象に行われます。

 このほか、各地区保護司会が企画する自主研修や、更生保護法人日本更生保護協会が企画する研修などがあります。

 保護司は、配属された保護区ごとに保護司会を組織するものとされています(保護司法第13条)。現在、全国に886の保護区が設けられています。
 これらの保護司会は、都道府県ごと(北海道では4つの保護観察所の管轄区域ごと)に保護司会連合会を組織しています。
 また、地方更生保護委員会の管轄区域ごとに地方保護司連盟が、全国組織として全国保護司連盟がそれぞれ組織されており、いずれも保護司の諸活動の充実強化を図る上で重要な役割を担っています。

保護司の組織

※1法務省保護局は、法務省の内部部局の一つで、更生保護制度を所管しています。

※2地方更生保護委員会は、札幌、仙台、さいたま、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の8か所に置かれ、管内にある矯正施設(刑務所・少年院)からの仮釈放・仮退院、保護観察所の事務の監督などの業務を行っています。

※3保護観察所は、都道府県庁所在地(北海道は、札幌、函館、旭川、釧路の4か所)に置かれ、保護観察や、矯正施設に入所中の人たちの生活環境の調整、犯罪予防のための世論の啓発などの業務を行っています。

法務省保護局「更生保護の組織」のページ